2017年3月20日月曜日

分散による変質

私がフェルデンクライスメソッドを行う際に今のところ最も心を砕いているのは、質を変えること、そして質が変わったことが実感できることです。

少し前に湿潤療法を調べた際、ハイドロコロイドという物質に興味を持ち、さらに調べを進めてコロイド分散体に、そして分散そのものを調べていました。

物質が極めて細かい状態で別の物質内を浮遊する現象を分散と言うそうです。
牛乳は液体の中を脂肪が分散している状態である例が取り上げられていて、あの水と違う独特の質感をもたらしていることが実感できます。他にもアスファルトや塗料、のりなども分散状態であるとされ、多くは粘性をもった物質です。

私が動きを見る時に、無意識にこの粘性のようなものを見ていることに気が付きました。偏った状態にある動きは硬質であったり逆にスルスル動く質感です。そこから使っている筋肉や緊張のタイミング、意識の持ち方が分散してその動きが持つ機能と役割が流動していくほどに微妙な粘性をまとった動きになっていきます。

フェルデンクライスメソッドは構成している物質の総量や基本的な構造を変えることなく質を変えることができます。そして時に全くの別物になったかのような変質を実感することもあります。化学用語における分散の概念は全くの別分野でありながらこのメソッドの核心のひとつを絶妙に言い表しているように感じました。

フェルデンクライスメソッドが難しく、そして面白いところは人体の構造に留まらない幅広い世界の原理というものを収集していくことで初めてワークの全体像が見え、薄皮を剝ぐように精度が上がっていくところにあると思います。

どこで何をしていようとも、プラクティショナーで在れるこの柔軟さが私のジョブ(仕事)の概念をより分散させて新しい質を持った何かへ変質させていくのかもしれません。